新生希エヴァンゲリオン未来の向こう側


第弐拾話―停止と再開  再生と殲滅―



俺たちがヘリで太平洋上空へと向かったのは空を進む大型の輸送機に接触するためだった。
というのも新しいエヴァンゲリオンが一機完成したらしくその機体とパイロットとご対面ということだった。
「で、この前の停電の件、何か分かったんですか?」
ユメミちゃんが前に座っているミヨコさんに聞く。
あの停電は何者かの工作によるものだと判明した。
というのも、あんなことができるのは工作するしかないだろうというのがレンさんの言い分であった。
人類の運命を左右する大事なAB本部という施設が簡単に停電を起こすはずがないからである。
「それが、未だに誰の仕業かわからないのよねぇ……まだ捜査を続けているらしいけど。難しいらしいわ」
ミヨコさんが書類に目を通しながらそう言った。
よく、酔わないな。
俺は、実を言うとすでに酔っていた。
船に乗ることはあっても、ヘリに乗るなど生まれて初めてのことだ。
それを察したのか、隣に座っていたシズクが俺の顔を覗き込んだ。
「どうしたの?」
「いやぁ……別に。なんでもないよ。なんでも」
平静を装い、作った笑顔で答えた。
うぅ、気分が悪い。
船酔いならぬヘリ酔いだな……。
俺のテンションがかなり下がっていることを知らないヘリのパイロットは行き先へ急ぐかのようにヘリを大きく揺らした。
「あれですか!?行き先って!」
俺が座っているのを忘れたのか、俺に乗っかるようにしてシズクが窓から外を見た。
空は澄み渡り、下には真っ青な海が広がっている。
見ているだけで酔いそうだ。
それよりもシズクさん、体がめちゃくちゃ俺に接触しているんですが、
「別にいいでしょ」と言っているかのような目つきで俺は見られた。
そっちがよくてもこっちは……。
いつもなら、何か言い返しているところなのだが、生憎俺はヘリ酔い中の身であるためそんな元気はない。
シズクが見る先には大きな黒いものが二つとそれの周りに小さいものが数個見受けられた。
ヘリが近づくにつれそれが巨大な戦闘機だということが分かった。
「さっ着いたわよ」
ミヨコさんが俺たち三人に言った。
やっと降りられるのか……。
って、降りたとしてもまた飛行機じゃないのか?
俺の予感はまさに的中していた。
輸送船の一機の後部ハッチが開き、そこにヘリが入る。
また、少々揺れた。
皆俺に嘔吐させたいのだろうか……。
「そんな、わけないでしょ!さっさと出てよ」
俺が酔ったことを気遣うということがお前にはないのか。
そんな、俺の想いを無視してみんな輸送機の奥へと進んでしまった。
ひどいな……と思いつつ俺もその後を追うしかなかった。
その輸送機の人間にブリッジへの案内されていたときのことだった。
ヘリ酔いも良くなってきた俺には妙な殺気を感じていた。
俺だけということは、俺に向けられた殺気なのだろう。
シズクやユメミちゃんの俺に他する殺気なら気づくはず。
誰であろうか。
と、思っていたときだった。
上から飛び降りたような音が聞こえた、もちろん人間がだ。
それに、気づき上を見た瞬間、
「!?」
キラっと光る刃物のようなものが見えた。
とっさに後ろに飛びのいた。
着地したその人間は飛びのいた俺へ追撃してきた。
少々危険だったが、俺はその人間の刃物を持っている手をぐっと握った。
ん?こんなに細いってことは……。
もう一つの拳が飛んでくるのが見えたので手を離し、しゃがんだ。その者はさらにスカートを履いていた。
これで大丈夫かと思ったら今度はその者の足が蹴る体制になるのが見えた。
少々荒っぽいと思ったがその蹴りあがっている足を持ち、その者をひっくり返した。
「っ!?」
思いっきりバランスを崩してそのまま俺の目の前で派手にこけた。
自分が倒れたことに驚いているのかその者は立ち上がらない。
それとも頭でも打ったのか?
俺が手を差し伸べようとしたときぬくっと立ち上がった。
黒い服に黒いスカートを履き、黒いジャケットを着ていた。って、真っ黒だなぁ。
しかし、その服とは対照的な肩まで伸びた銀色の髪と少し鋭い灰色の瞳が目に映った。
ちょっと、強面(こわもて)である。
「な、なんなんだ、いきなり?」
その者――恐らく女性――は刃物を鞘に収め懐にしまった。
そして、俺を見据えた後表情を崩したような気がした。
う〜ん笑っているのか?
表情が変わったんかどうかさえ確証がなかったためそれがどんな表情なのか分からなかった。
「やるな……気に入った」
はぁ?
一体こいつは何を言っているんだ?
ってことは俺の能力を試しただけってことか!?
それで本物の刃物を使うとは……こいつ頭大丈夫か?
「この子が新しいパイロットよ、ユウキ君」
あんだけ派手に戦っていたのだから先を歩いていたシズクやユメミちゃん、ミヨコさんが気づくのは当然というわけでシズクがそいつに食って掛かった。
「ちょっとミヨコさん、本当にこいつが新しいパイロットなの!?」
そいつは俺のときとは違い無表情でシズクやユメミチャンを見た。
ミヨコさんは食って掛かるシズクを抑えて俺たちにその女性を紹介してくれた。
「エヴァンゲリオンBtypeパイロット、シュリ・南・バートラスよ」
俺を含めるパイロット三人の視線が一斉にシュリ・南・バートラスに向く。
特に照れるでもなくよろしくと無表情で言った。
なんか、表情に変化がないやつだな。
そのシュリ・南・バートラスを加えた五人はブリッジへと向かった。


それはゆっくりと太平洋上空を移動していた。
丸いピエロの顔のような部分を中心に羽が四つ広がっている。
二枚の羽は翼のように、もう二枚の羽はひし形のような形をしている。
そのピエロの顔のような部分から後ろに伸びる尾。
尾の先のほうには赤い球体が見える。おそらくコアだろう。
ピエロの顔の見つめる先には大きな黒い鳥のようなものが二つ、そしてその周りを飛ぶ小さい鳥。
それは、現在エヴァBtypeを輸送している大型輸送機である。
そちらでもこの『3A−601 コカビエル』を確認したようである。
「状況は!?」
ミヨコがブリッジへと駆け込む。そして機長に煽(あお)る。
「AB本部より入電!太平洋上を進むパターン青を確認!」
「言われなくてもあんなもんは使徒ぐらいしかいないでしょうが……あとどれくらいで到着!?」
「二時間ほどです」
日本からはまだ遠く、空が暗くなり星が見え初めても未だに到着できなかった。
ブリッジにはサブモニターがついておりそこにはこちらに向かってくるコカビエルの姿が見える。
羽は羽ばたかせることはなく、静止したまま移動している。
『こちらBtype。シュリ・南・バートラスだ。発進許可を求める』
別のサブモニターにはシュリがプラグスーツに着替えて立っていた。
やはり無表情である。
「敵は飛行能力を持っているわ。エヴァでは残念ながら空中戦闘ができないわ」
『問題ない。Btype支援用に開発された小型戦闘機がある』
Btypeと共に開発された支援用に開発された小型戦闘機はBtypeの背中に取り付けることで短時間ながらも空中戦をすることが可能となるのである。
だが、やはりエヴァという巨大なものを支えながら戦闘を行う小型戦闘機には限界がありその戦闘時間は最大で一時間のみである。
格納庫ではすでに戦闘機の取り付けが完了していた。
後はパイロットを待つだけである。
そのパイロットもすでにエントリープラグに入るのみとなった。
整備員とパイロットであるシュリ以外にも人間がいた。
「本当に行くのか?えっとぉ……」
ユウキだった。
「名前で呼んでくれてかまわない。それにお前でも私のように出撃しただろう?」
その問いかけにユウキは頷き返した。
そしてこう返した。
「忘れるな、俺やミヨコさん、シズクやユメミちゃん、皆が待っている。仲間が待っているんだ」
一瞬シュリは驚きの表情を露にした。
戦闘訓練とエヴァの実験などで一人でやってきたシュリにとって仲間というのが耳についたのだろう。
「私はいつだって一人だ」
そうきつい表情で言い放つシュリに対してユウキは言う。
「今は違う、俺やシズク、ユメミちゃんだってエヴァのパイロット……ROEを受けた身だ。もう、お前は一人じゃないはずだぜ」
ウィンクする。
ユウキに表情を崩したシュリだったがすぐにエントリープラグへと乗り込んだ。
もうユウキも止めなかった。
出撃するBtypeを見送った後ブリッジへと戻った。
星が輝く夜空へと旅立ったBtypeを待っていたのは航空隊と使徒コカビエルとの激闘だった。
ただし、航空隊の攻撃ではコカビエルの――使徒の――ATフィールドを突破することは到底できない。
「航空隊は支援してください。ここはBtypeが受け持ちます」
『了解した』
航空隊は後退し、攻撃をBtypeに任せ輸送機の警護に回る。
最も、Btypeが撃墜されれば輸送機だけを守ってもあまり意味はないのだが。
小型戦闘機に搭載されている機関銃でコカビエルに対して攻撃を行う。
だが、それはATフィールドによって防御されてしまった。
「くっやはり接近戦を仕掛けなければ……!」
シュリは小型戦闘機をコカビエルに接近させる。
コカビエルはそれに対して左右に伸びていた翼を広げ、羽ばたいた。
直後、動きが機械的なものから鳥のような動物的になる。
前より数段動きが素早くなった。
旋回性能はほぼBtypeと互角だろう。
「武装が少なすぎる!……おまけに視界が悪い」
コカビエルは尾の先から怪光線を放っている。
それを避けきるので精一杯だ。
『シュリ聞こえる?』
プラグ内に響いてきたのは輸送機のブリッジにいるミヨコの声だった。
「聞こえています、坂中作戦司令」
『今から無人の戦闘機を二機、自動操縦で目標に対し突撃させます』
「了解。その隙に目標を撃破します」
プラグ内のレーダーに黄色い丸印が二つ浮かび上がる。
無人の戦闘機である。
Btypeはコカビエルにその戦闘機を悟られないようけん制する。
コカビエルがBtypeに気を取られている。そして横から無人の戦闘機が二機コカビエルに突っ込んだ。
耳をつんざくような轟音とともにコカビエルが二機の爆発の光に包まれる。
「今しかないっ!」
Btypeは腰に通常装備されているプログナイフを片手に持ち、コカビエルに進路を変更する。
ATフィールド中和圏内に入ったそのとき、プログナイフが一直線にコカビエルのピエロのような顔の真下にある赤い球体へと向かう。
コカビエルは防御することもできず、プログナイフはコアに突き刺さった。
その瞬間、コカビエルは動かなくなりその体は海の底へと消え去った。
『使徒の消滅を確認しました』
無線でそう聞こえる。
シュリは何気なく、BtypeとBtypeの背中に取り付けられている戦闘機のエネルギー残量を確認した。
残り時間は僅か13分だった。
だが、ギリギリの残り時間とは対照的にシュリは余裕の表情でBtypeを大型輸送機へと向かわせた。


俺たちはBtypeが輸送機に戻ってきた後無事飛行場らしき所に着陸した。
ブリッジから地上へと降りる。
だが、そのときだった。
出てきたブリッジから高い音が聞こえた。これは……警報!?
「坂中作戦部長!太平洋から高エネルギー反応!こ、これは……!?」
その人間の報告が聞こえる前にそいつは姿を現した。
太平洋が大きな水しぶきを上げる。朝の太陽がしぶきに輝きをもたらす。
しかし、そこに現れたそいつはそんな美しいしぶきとは反対に醜く、嫌悪感を抱くようなものだった。
いやあれは?さっきの使徒に似てるような……。
そいつは陸に上がってきた、どうやら知能はそんなに高くないようで近くにあるビルを優先的に破壊しているようである。
って、冷静に分析している場合じゃなかった!
逃げようと輸送機から背を向けたとき、丁度逆側に向かう影が見えた。
逆側って、かなり危ないだろ!
俺は考える間もなく走り出した、もちろん逆側に。
その影は綺麗なストレート……シズクっ!?
なんで、死にたいのか!
輸送機の前で立ち止まる、近くには使徒!
「バカ野郎なにやってんだっ!死にたいのかっ!?」
シズクの右手を掴み、離れようとする。瞬間的に手を振り払われる。
っ!?
「中にまだユメミがいるのよっ!」
目が血走っている。
周りが見えてない。
しょうがないと思う、家族が目の前で危険な状態なのだから。
そのとき、輸送機の後部ハッチが開いた。
いや、あれは壊れたといったほうが正しいだろう。
ハッチから出てきたのは黒色のカラーリングに所々に灰色のポイントがある。
あれはBtype。シュリかっ!?
『下がっていろ、ここは私がやる。早く非難しろ』
無線でそう告げられる。あいつの戦闘能力なら大丈夫だろう。
急いで輸送機の壊れかけのブリッジで気を失っているユメミちゃんを抱える。
だが、そのときだった。
「ユウキ伏せてっ!」
シズクの声が聞こえてすぐに体制を低くする。
というかもう地面に伏せている。
伏せたとほぼ同時にする爆音。振り向くと、使徒とBtypeが組み合っていた。
輸送機はすでに半壊。このまま全壊してもおかしくはない。
「ゆ、ユウキさん、すいません!」
どうやら、ユメミちゃんも気づいたようだ。
見るとBtypeが使徒の足のようなものを払い、体勢を崩した。
腕のようなものを掴んだ。一気に投げる気だろう。
『うおぉぉ……っ!?』
開けっ放しになっている無線の回線から雄たけびがするがすぐに躊躇するような声がした。
俺とユメミちゃんがいるから後ろに投げられないのだろう。
使徒はその一瞬の隙をつき逆にBtypeを投げ飛ばした。
「シズク!ユメミちゃんを頼む!」
ユメミちゃんを抱え、シズクに渡す。シズクはユメミちゃんを担いだ。
戦闘の邪魔になるので逃げようとしたが、何かが引っかかった。
シズクはとっくに逃げた。
使徒の上に何かが乗っかっていた。
それは人だった。黒いマントを羽織っていた。
「シンジっ!?」
俺は叫んだ。その瞬間消えた。
なんでこんなところに……まさかっ!?
さっき殲滅した使徒を復活させたのはシンジなのかっ!?
俺の目の前に暗い青色の足が現れる。この足はエヴァのものだ。
上を見上げるとGypeがいた。使徒が現れたと聞いて出撃したのだろう。
『下がって、ユウキ君!』
無線でそう叫ばれた。ここにいてもただ邪魔なだけだ。
近くに見えた、戦闘指揮車へと走った。


足元にいたユウキ君が戦闘指揮車に向かうのを確認して使徒の方へと向かった。
使徒は輸送されてきた新しいエヴァと組み合っていた。
私は無防備になってた使徒の背中に回し蹴りをした。
吹っ飛ぶ使徒。
接触回線で私は新型エヴァに呼びかけた。
「大丈夫!?」
『ああ、すまない。助かった』
そう一言言い、通信を切られた。その人物は私と同じくらいの年齢の少女に見えた。
だが、冷徹そうな第一印象だった。
組み倒されていた新型エヴァは立ち上がると、吹っ飛び体勢を整えていた使徒に向かっていった。
私は後方から邪魔にならないようにサブマシンガンで使徒に攻撃を加える。
しかし、一体弱点の球体はどこにあるのだろうか。
一見しただけでは分からない、となると体内にあるのだろうか。それとも死角か……。
サブマシンガンの数発が新型エヴァに当たってしまう。
『邪魔をするなっ!ここは私が……っ!』
邪魔って、私だってエヴァに乗ってるんだから!
少し苛立ち、私は使徒に向かってサブマシンガンを狙いをつけることなく乱射した。
数発新型エヴァに当たっているがかすり傷程度だろう。
『レイ!Btypeの残量エネルギーがもう残り僅かしかないわ!援護して!』
指揮車にいるミヨコさんからそう告げられる。新型はBtypeというのかとちょっと場違いなことも思っていた。
Btypeはプログナイフを抜き取り使徒の体に突き刺した。だが、使徒はお構いなしにBtypeを張り手で吹き飛ばす。
『うぅ!』
すかさず使徒はBtypeに覆いかぶさった。
私はその隙に使徒の後方から近づいた。もちろん、気づかれないためにサブマシンガンは撃っていない。
使徒は殴る以外の攻撃手段を持っていないのか覆いかぶさった後も殴る行為しか行わなかった。
「このっ!」
私はサブマシンガンを使徒に押し当ててゼロ距離射撃を行った。
するといとも簡単にサブマシンガンの弾丸は使徒を貫き大きな風穴を開けた。
『今っ!』
プログナイフを持ったBtypeの右手がその風穴に入り、まるで魚をさばくかのように穴から引き裂いた。
そこに赤い球体は見えた。あれが弱点の球体っ!?
「あの球体を切って!」
私は回線を開きBtypeのパイロットに告げる。だが、答えは返ってこなかった。
なんでっ!使徒はピクピクと動きすぐにでも傷口を再生しそうだった。
エネルギーが切れたのっ!?
さっき、ミヨコさんはBtypeのエネルギーは残り僅かと言っていた。
なら、考えられなくもない。
私はプログナイフを手に取り、塞がる数秒前の使徒の傷口にナイフを持った手を突っ込んだ。
聞いたこともないような悲鳴を上げる使徒。
ナイフで球体を引き裂く。
その瞬間、使徒の再生行動と悲鳴はまるでなかったかのようにピタリと止まった。
念のために球体を取り出し、握りつぶす。
しかし、切れ目もないのにその球体は綺麗に割れた。
これは一体……?
一回割れたのかな、いやそれとも割れやすい素材で作られたものなのだろうか。


使徒撃破後、戦闘指揮車で本部へと戻る際に戦闘報告が行われた。
報告というものは名ばかりで本当はあの謎の使徒についての会議のようなものだった。
「映像だけでは輸送中に空から現れた使徒と酷似していると言えるわね。まあ、飛行場に現れたものは飛行能力も怪光線もなかったけど」
レンさんが表示された映像を比較しながらそう言った。
俺は間近で見たときに使徒の上に乗っていたシンジらしき人物のことは伏せておいた。
言っても、怪しまれるだけだと思ったからだ。
「とにかく、何故あの使徒が復活して再度私達を襲ってきたのか……それを調べる必要があるようね。幸い残骸は綺麗に残っているようだし」
復活した使徒の体はグジャグジャという言葉がぴったりの外見をしていた。
おそらくミヨコさんはコアだけを的確に破壊したことを言っているのだろう。
その後すぐに本部につき、俺たちパイロットは解散となった。
綾波とともに地上へと帰ろうしていたときだった。
丁度ミヨコさんの部屋の前を通ったとき女性の怒鳴るような声が聞こえた。
『今回の件は全て私の責任です!処分を検討していただきたい』
聞きなれない声だった。だけど、知っている声だった。
俺が立ち止まり聞き耳を立てるようにすると綾波も俺に合わせた。
『そうは言ってもね……使徒が殲滅された後、復活するなんてことは使徒戦役時代のデータにも今までにもなかったこと。つまり想定外なのよ』
対してこれはミヨコさんの声である。
その声はとくに怒ってもいなく、穏やかな普通の声だった。
『ですが!空中で戦闘をしたとき破片が残らないぐらいに攻撃を加えておけば!』
『空中だったし、エヴァにそれは無理よ。第一まだ同一の使徒じゃないという可能性もあるのよ?』
ミヨコさんがそう言うと、怒鳴っていた人物は口をつぐんだのだろうか。
しばらくの間、声が聞こえなかった。
「ユウキ君、行きましょ?」
「あ、ああ」
綾波が先に歩き、俺もその後に続く。
地上へと出たところで話しかけられた。
「ねえ、さっきのたぶんあのBtypeのパイロットだと思うんだけど……」
「言われてみればそう考えられなくもないな」
むしろ、そう考えるのが妥当だった。
話の内容からして少なくとも当事者達の会話であることはまず間違いなかった。
「実はね、あの復活した使徒のコアを破壊したとき……対して力を込めなくても裂けるように割れたのよ。変だと思わない?」
使徒の共通の弱点として知られている赤い球体、コアはやはり弱点としても使徒自身が自覚しているのかそれ相応の強度がある。
と言っても、サブマシンガンやプログナイフで壊せないほど頑丈ではないはず。
それがいとも簡単に割れるだろうか。
「割れたとき、綺麗に裂け目とかなかった?」
俺がそう質問すると綾波が考える仕草をしたあとに
「う〜ん、確かスパっと音がしてもいいくらいに綺麗に割れたかなって……」
「つまり、最初からあのコアは割れていて、誰かが復元したってことになるような……一体誰が……っ!」
そんなの思い当たる人間が一人しかいない。まあ、人間とは言い難いけど。
「そんなことできるのって同じ使徒ぐらいじゃないの?あとは神様とかね」
綾波の言葉は最後笑いながら言っていたが、俺には笑い事に捉えることはできなかった。
それだけあの場所に碇シンジがいたということが俺には引っかかっていた。


To be continued


次回予告

恐るべきスピードの使徒。
翻弄されるエヴァ。
悪魔は再び降臨する。


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後書き
再びシンジ君と思われる人物登場!1シーンだけだけどね。
そして新しいエヴァがお目見え、Btype。とシュリちゃん。
シュリちゃんはまんま軍人みたいなキャラクターにする予定。
ぶっちゃけちょっと前まで設定上では男だったけどね。
復活する使徒は初めて書きました。
ちなみにコカビエルは旧約聖書の星の天使から取りました。