新生希エヴァンゲリオン未来の向こう側

第七話―地下からの侵略者―




『いい?目標には決して接近戦を仕掛けないで。必ず遠距離からの射撃で様子を見て』
「わかりました。敵が近づいてきた場合は?」
『すぐに距離を取って」
「格闘はするなってことか……」
今、第四新東京市に一つの危機いや、敵が迫ってきていると言ったほうが正しいか。
なんと、使徒が再び襲来したのである。
使徒戦役のときには合計17体の使徒が人類に対して攻撃を仕掛けたということになっている。
ってことは今回の使徒襲来――ABでは『第三次使徒襲来』と呼ばれている――でも複数来る可能性は高い。
まさに、その予測は的中か?
本襲来二体目である。
最もすでにナンバーは04らしいがな。
なんでも、今回の使徒は地中から襲来してきたらしく探知が遅れたらしい。
出撃したら即戦闘か……。
『エヴァSStype発進!!』
へっ?SStype?
その瞬間いきなりものすごいGがかかった。
それは俺の乗っているエヴァW号機が地上に向けて射出されたことらしかった。
っていうかいつ俺のエヴァは改名したんだよ。



シェルター
「ねぇ、やめようよぉ。ミヨン」
「ここまで来たんだよ。もういいじゃん」
シェルターから出ようとしている人影が二つ。
一つは黒い髪の毛のストレートで坂中エリだ。
もう一人は少し茶髪の髪の毛をポニーテールにしている活発そうな少女である。
しかし、そこには厳重な巨大なドアがある。
見るからに少女二人では開けられそうにはない。
「開けられないってば……」
エリがほっと肩を撫で下ろしたそのときだった。
「どおりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
の声とともにドアが変な金属音と立てて開いた。いや、壊れた。
なんとさきほどのポニーテールの少女が蹴っ飛ばしたらしい。
この少女名前を『早崎ミヨン』という。
「な、なんで開いてるの!?」
エリがこんな場面に出くわしたら誰もが絶対に言うであろう言葉を口にする。
「私に不可能はない!」
そういう問題で片付かないのは確かである。



第4新東京市

第4新東京市には細身で柔軟な動きをしながら静かにAB本部へと進行している者がいた。
「3A-601 4th スイエル」である。
使徒とは思えない静かさで進行している。
しかし、その真正面の少し距離を置いたところに人型の巨大な物体が姿を現した。
エヴァW号機改めSStypeである。
その手には狙撃用のライフルが握られている。
ライフルから伸びているコードはそのまま頭に接続されている。
精密性を上げるためであろう。
「おいおい、真正面に出さなくても……」
ユウキは少々愚痴るがすぐに横に飛びビルに隠れる。
そのビルからキョロキョロしているスイエルに狙いをつける。
「スナイパーになった気分だな……」
引き金を引く右手に緊張が走る。
手に汗をかいているようだ。
標準がスイエルに合わさる。
「よし!」
ユウキはレバーのスイッチを押す。同時にエヴァの手もライフルの引き金を引いた。
ライフルから放たれた弾丸が確実にスイエルに命中する。
『!?』
スイエルはそちらに気づきゆっくり進行していたその動きを止めた。
SStypeの方を向くと素早く走るかのようにスイエルは動き出した。
「なにっ!?あんなに早く動けるのか!?」
その動きに驚きながらもユウキは頭に距離を取る動きをするイメージを思い浮かべる。
SStypeは距離を取るようにビル伝いに移動する。
しかし、スイエルは執拗に追ってくる。
「くっ!……ミヨコさん!ライフルじゃあの動きに着いて行けません!マシンガンかなんかないんですか!?」
円を描くようにエヴァSStypeとスイエルがイタチごっこを繰り返している。
だが、スイエルも学習しているのか時折動きを変えSStypeを追い詰めている。
『ユウキ君!狙いを付けないで射撃できるかしら?』
「それは無茶苦茶じゃぁ!?」
ユウキはミヨコにそう言われ無理かと思ったが一か八かライフルを構えず狙撃する。
すると狙っていないのでコアには当たらなかったが確実にスイエルの体を捉えた。
「なんだ、簡単じゃん」
SStypeは横に飛び再びライフルを射撃する。
しかし、スイエルはその鋭い爪を生かし弾をはじく。
「ちっ!……どうすれば、ミヨコさん!決定的なダメージは与えられてないようですが!」
ユウキはそう言いながらSStypeを横に移動させる。
スイエルはまるでカマキリのようにその爪を使い草刈をするがごとくビルを真っ二つにしながらSStypeを追い回す。
いい加減ヤキが回ったようである。
「うわっ、ちょっとあれは反則だろ!」
『ユウキ君、今から旧式だけど打撃用の武器を射出します。それで迎撃して!ポイントはモニターに表示させるから!』
「わかりました!」
モニターの隅に街の簡易マップが表示されそこに黄色い点が点滅する。
そこに向かってSStypeは走る。
スイエルは一旦切るのをやめ移動に専念する。
「しつこいな!ライフルを破棄します!」
SStypeは反対に向き直るとライフルをスイエルに向かった投げた。
それに驚いたのかスイエルは急停止し、爪を使いライフルをミンチにする。
しかし、その隙にSStypeはポイントに到着し旧式の打撃用武器『スマッシュ・ホーク』を手に取る。
「斧か……上等!」
そうユウキがつぶやく。
SStypeはスマッシュ・ホークを振りかざす。
スイエルもそれと対峙し爪を構える。
まるで決闘のようである。
「この!」
先に動いたのはSStypeだった。
スマッシュ・ホークを持ち直すとスイエルに向かって振り下ろす。
スイエルはその両手の爪をたくみに操りそれを避ける。
しかし、遠心力に任せてSStypeの持つスマッシュ・ホークはさらにスイエルを追撃する。
今度は当たると思われたその攻撃もスイエルは上体を反らして避ける。
体は以外と柔軟なようだ。
「ちょこまかと!」
SStypeは一度距離を取るが今度はスイエルは片方の爪を使い攻撃を仕掛けてくる。
ユウキが斧という武器に不慣れなためか武器で受け流すことはせず横に飛び間一髪で避けた。
だが、そこでスイエル以外この戦闘を見ている皆が驚く行動をスイエルはしてきた。
なんと足までもがその鋭く切れ味のいい爪だったのである。
まるでカンフーの用に体を動かし攻撃を強める。
「やばっ!避けられない!うぐっ!」
足を払われたSStypeは綺麗に転倒した。
それを狙わない手はなくスイエルはのしかかる。
その器用な足を使いSStypeの足をロックする。
足を上げようものならたちまちその鋭い爪で足が傷ついてしまうだろう。
「これはちょっとやばいな……こうなったら!」
SStypeは暇をしているスマッシュ・ホークを相手の横に突き刺した。
その攻撃は無駄ではなくスイエルの片方の手を切り取った。
しかし、またもやライフルと同様木端微塵(こっぱみじん)に切り裂いた。
スイエルはその爪をSStypeに突き刺そうとするがSStypeは刃とは逆の方の爪を掴む。
「くっ、このままじゃ……」
状況は悪い、足が使えず手もスイエルの強力な力により抑えるのがやっとである。
しかし、さらに状況を悪化させる原因がSStypeの付近には存在していた。




「冗談だろ?」
そこには逃げ遅れたと思われる少女二名が取り残されているのである。
マジかよ!?
このままじゃただでさえ状況悪いのに……。
「ミヨコさん!」
俺が叫ぶとすぐに返答は来る。
あちら側も突如のイレギュラーに焦っているようだ。
『な、なんでこんなところにエリと早埼さんが!?』
理由は後で聞けばいいだろ!なんとかしてくれよ!
エリちゃんともう一人の女の子を見殺しにするわけにはいかないし……、どうする水島ユウキよぉ!
答えは簡単特攻しかあるまい。
確か肩にナイフがあったはずだ。
それを取り出す。
『何をする気!?ユウキ君!?』
「特攻します!」
『ちょっと待ちなさい!体勢を』
「このぉぉぉぉぉぉぉ!!」
足を起こす。
しかし、そのとき敵の爪にかかり激痛が走る。
「うぅ……痛い……くそっ!」
それをなんとか堪え敵の頭部にあるいかにも弱点だと言っているような光る球体を狙う。
ナイフを逆手に持ち直すと一気にその球体に突き刺す!
相手はのたうちまわるかのごとく体をクネクネ動かしている。
その所為で相手の残った手を押さえていた手が離れた!?
その瞬間激痛が左手に走る!
「うわぁぁぁぁぁ!!……腕がぁ……」
見るとエヴァの手が切断されていた。
そこからは血が噴出している。
俺はさらに敵の弱点であろう球体を突き刺すナイフを持つ手に力を込める。
目が霞んできた。
左腕の痛みがもう限界だった。
だけど、ここで気を失っては倒せる使徒も倒せない。
俺は相手を倒すことだけに集中する。
「まだかよっ!……くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
もう叫ぶしかなかった。
痛みを堪え意識を手放すまいとするには叫ぶほかなかった。
しかし、そのとき突如として使徒の動きが止まった。
と思ったらぐったりしてそのまま動かなくなった。
『目標完全に沈黙しました……』
聞いたことのない声――オペレーターの声だと思うが――が敵の負けを宣言する。
俺は今意識を手放すことにする。




第4新東京市某所
現場は真っ赤だった。
エヴァSStypeの左腕切断という損害の所為で使徒と戦った最後の場所はまさに血だらけだった。
エリやミヨンにその血が飛ばなかったのは不幸中の幸い。
というか怖くて目を閉じていたらしい。
「ったくなんで外に出ていたの!?一歩間違ったら死ぬところだったのよ!」
ミヨコは二人を呼び出したと思ったら怒鳴った。
エリはびくついて今にも泣きそうである。ミヨンの方もバツが悪そうな顔をしている。
「あなたたちがいなかったらユウキ君だってもっと戦えたかもしれないでしょ!で、出てきた理由は一体なに!?」
ミヨコは二人、特にミヨンに聞く。
突如顔が近づいてきてビビるミヨンであったが控えめにこう答える。
「え、えっと……エリに水島先輩が乗ってるって聞いて……それで興味があって」
ハハハとミヨンは愛想笑いを浮かべる。
エリという名前が出てきたのでミヨコが睨む瞳がエリに向く。顔はミヨンの目の前のままだが。
それがさらに怖い顔にしているというのは本人は気づいているようである。
「ひっ……ご、ごめんなさい!お姉ちゃん」
もう泣いてしまったようだ。
ミヨンもしょんぼりしている。
無理もない。
何にせよ、怒鳴る、怒鳴る、怒鳴るのオンパレードである。
しかしそこにある人物が現れた。
「まあまあ、ミヨコさんそんなに怒鳴らなくても……」
ユウキである。
ミヨコはユウキの口からそんな悠長な発言が飛び出したのでポカンと呆気に取られている。
「二人が出てきて戦いにくかったのは事実ですがそれでも使徒は倒したじゃないっすか?」
ユウキは笑顔で答える。
さきほどの腕の痛みはもう大丈夫なようだ。
しかし、その発言を聞いた途端ミヨコが物凄い形相で
「あんたも、あんたよ!あなたには私の命令に従う義務があるのよ!?」
「えっ?そうなの!?」
今現在ユウキはABの作戦部に所属するエヴァンゲリオンのパイロットという地位に位置する。
つまり、作戦部部長のミヨコという上司の命令には従わなければならないのである。
「あのとき体勢を立て直していればあなただって痛みに苦しまずには済んだし、エヴァの損傷だて抑えられたかもしれないのよ!?」
ユウキはその自分がした命令に従っていればもっと余裕で勝てたという意見に対し腹が立ったのかこちらも少し怒った顔で怒鳴る。
「じゃあ、言いますけど、あのとき足を拘束されて手も片方は使えない状況だったんですよ!?どうやって体勢を整えろと!?」
「援護射撃とか無人の戦闘機を一機突っ込ませて気をそらさせるとかあるでしょ?いろいろと!」
「その方法じゃ二人は無事じゃすまなかったと思いますが!?」
睨み合う二人。
どちらも言い分も正しいといえば正しいのでどちらも一歩も引かない。
エリが耐えられなくなったのか何か叫ぼうとしたときだった。
「はい、そこまでね。二人とも」
入ってきたのはレンだった。
呆れ顔で二人のことを交互に見るレン。
「なによ!レン。どうかした!?始末書の後始末の催促なら間に合ってるわよ!」
「違うわ。高羽総督が呼んでいるわ」
「へっ?総督が?」
「ええ、なんでも話があるとのことよ。ああ、呼んでるのはあなたじゃなくてユウキ君をよ」
「お、俺が?」
今回の上司の命令無視や独断専行などがあったためユウキが少々ビビリ顔になる。
それを見たミヨコはいやらしい笑みを浮かべて
「あら〜もうお声がかかったのぉ?ユウキ君早いわね」
それをユウキは多少睨むがすぐに部屋を出て行った。
「それと」
レンがさらに付け足す。
「総督から今度はあなたに伝言」
「なんなの?」
さっきとは違う涼しい顔でレンに聞くミヨコ。
「始末書を早く始末しろとのことよ」
ポカンとまた口を開け落胆するミヨコ。
そそくさと部屋を出て行ってしまった。
「あ、あのぅ私たちはどうすれば?」
ミヨンがレンに恐る恐る聞いている。
よっぽどミヨコの言い方が堪えたようだ。
しかし、ミヨコとは対照的にレンは笑顔で
「あら、あなたたちはもう帰っても大丈夫よ?今回は大目に見るけど次はダメだってここの司令官が言っていたわ」
「は、はいわかりました。すみませんでした」
ミヨンとエリはレンに謝る。
だが、レンが
「それは私に言うべき言葉じゃないわよ?」




AB本部

俺は「司令室」と書かれている部屋の前に立っている。
レンさんによるとここの一番偉い人が俺を呼んでいるらしい。
なんなのだろうか、今日のことであろうのは間違いない。
ってことは俺の処分のことについてだろうか。
「あ、あの水島ユウキです!!」
うぅ、緊張して声が変になった。
「ああ、ユウキ君かね。入りたまえ」
中からその人の声だろうか。聞こえてきたため俺は失礼しますと言い中に入った。
中はかなり明るくそして広く、イェルサレム内を見渡せる大きなガラスもあった。
しかしコンピュータや机が所狭しと並んでいる。
「やあ、久しぶりだね。ユウキ君」
「あなたは確か初めてエヴァを見たときの」
初めてエヴァに乗ったときの映像がフラッシュバックした。
俺にエヴァを紹介というか見せてくれた男性だった。
「あのとき一応挨拶はしたが高羽カズヒロだ。よろしく」
「は、はい……それで今回はどのようなことを?」
俺は高羽さんに恐る恐る聞いてみる。
その俺の気持ちを感じ取ったのか微笑を浮かべながらこう言った。
「どうかね?ここの生活には慣れたかな?」
「へっ?」
俺は唐突に予想外な質問をされたため呆気に取られてしまった。
その様子を見て少し大きめに高羽さんは笑うと
「今日の戦いのことでも言われると思ったのかね?」
完璧に見透かされていた。
俺が頷くと高羽さんは急に真剣な顔になり
「命を懸けて人類のために戦ってくれている君たち若い人間を責める資格なんていうのは少なくとも私には無いと思っていてね」
この一言で俺はこの高羽さんがかなりいい人であり信頼できる人だということを悟った。
俺はかなりでかい声で
「ありがとうございます!!」
と叫んだ。
「自信を持っていいんだ。君たちは本当に立派なことを、大人にもできないことをしているのだからな?」
「は、はい!」
自然と俺は笑っていた。
「今日はそれが言いたかっただけなんだ。呼び出してすまなかったね」
「い、いえ。そんなことは」
俺は会釈を交わし部屋を後にした。



To be continued

次回予告
ある少年の誕生日。
たった一人孤独な誕生日。
この世に存在を許された日。
そんな少年に掛けられたある一本の電話。


後書き
前回の続き第三次使徒襲来の第四番目との闘いでした。
さて、スイエルというのは『地震』を司る天使です。
地面をどうこうさせる使徒にしようかと思いましたが序盤ではきついためこのような形になりました。
使徒が全てオリジナルというのは意外と大変です。
ちなみに新しいキャラクターが出てきました。
見覚えある名前だなぁと思った人は鋭いです。