新生希エヴァンゲリオン未来の向こう側

第参話―選ばれた少年―




国連軍の戦闘機は後退しつつ、あった。
理由は、唯一使徒に対抗できるとされている兵器。
エヴァンゲリオンが出撃したからである。
そのエヴァはW号機。使徒に徐々に近づいている。
武装はない。また、準備ができてないのだ。
第三次使徒襲来による、3th Apostleザキエルの外見は人型であり、手のようなものは丸い筒のようになっている。
そこからのエネルギー砲の攻撃が確認されている。
そして、顔のようなものからは触手が伸びそれにより近接戦闘にも対応しているようだ。
『レイ、なんとか近づけそう?』
「やってみます……!」
W号機はザキエルに近づく。
だが、ザキエルもW号機を確認したようで手からエネルギー砲を発射する。
しかし、それをW号機はステップで避けた。
「くっ……なかなか、近づけないわ…どうすれば」
ザキエルはまるで、遊んでいるかのようにエヴァW号機にエネルギー砲を連射している。
W号機もめげずに避けてはいるがいかんせんシンクロ率が低く、動きが鈍い。
しかし、残っていた戦闘機がザキエルに巡航ミサイルを発射した。
やはり、A.Tフィールドによりまったく歯が立たないが足止めと気を逸らすことには成功したようでその隙にW号機は近づいた。
「コノォ!!」
W号機はパンチをザキエルにした。
だが、ザキエルは二本の触手をうまく使いその手を掴みW号機を吹っ飛ばした。
「きゃあ……くっ……はぁはぁ」
エヴァW号機は綺麗な弧を見事に描き第4新東京市の中心に吹き飛ばされる。
そして、動かなくなった。
ザキエルはチャンスと言わんばかりに動かなくなったエヴァW号機を触手で痛めつけている。
対して、W号機はなす術もなく、その猛攻を受けている。
『レイ!?…パイロットの神経接続をカット!急いで!』
「うぐっ…ちくしょう…なにも、できないなんて……」
『エヴァW号機、シンクロ率二桁を切ってます!』
『なんですって!?すぐに国連軍に応援を!早くW号機を回収して!』
こうして、エヴァW号機による殲滅作戦は失敗に終った。



シェルター
一体全体、何がどうなってんだ?
いきなり、非常事態宣言があるし、振動は伝わってくるし。
本当に戦争でもしてるのか…。
隣に座っている少女は明らかにびくついている。
揺れるだけで「ひぃ…」といった感じになっている。
そういえば、名前をまだ聞いていなかった。
「名前、聞いてもいい?」
「えっ…?あぁ、はい…えっと、坂中エリです…」
「俺は水島ユウキだ。よろしく」
「はい…」
アレ?
坂中って…もしかして。
俺は首から提げていつも持ち歩いている親友の形見である軽く色が剥げた金色のロケットを開けてみる。
そこには一枚の写真が入っており、二人の女の子と一人の男の子が写っている。
その男の子こそ、俺の親友であるのだが、この一番下と思われる女の子がこの子に似ている。
「どうしたんですか?」
「い、いや…なんでもない」
俺はロケットを閉じる。坂中エリと名乗った女の子は特に気にしていないようだ。
再び、シェルターが揺れる。
おいおい、本当に大丈夫なのかよ?
いきなり、天井が落ちてきたりしないだろうな……!?
そうなったら、ここに居る全員諸共ペチャンコだ。
俺は少々不安になり、身震いした。
と思ったらエリちゃんがいきなり俺に抱きついてきた。
うぅ、殴られることは慣れっこだがこればっかりは慣れないよ。
見てみるとエリちゃんは涙目になっている。本当に怖いのだろう。
「あ、あの…エリちゃん?大丈夫?」
「ひゃ、ひゃい!?……あ、ご、ごめんなさい!!…つ、つい」
「ま、まあ、べ、別に、い、いいんだけどね…」
どもりすぎだろ、俺!
いいなら、突っ込むなよ、俺!
せっかくのおいしいシチュエーションをぉぉ!!
でも、ここは冷静に状況を把握しろ、俺。
一体、外で何が起こっているのか……。
本当に戦争が起きているのかただの、連続的であり、奇跡的な地震や自然災害なのか、それとも…。
俺は、その可能性を否定した。あれは、すべて2016年に倒したはずなのだから。



発令所
「呼吸、心拍数ともに低下!危険です!」
指令執行所では緊迫した雰囲気が流れている。
あの、エヴァンゲリオンが負けたのだ。初陣で。
唯一、敵うとされていた最終兵器がいとも簡単にやられてしまったことにショックを受けるとおともに対処法がなく、万策つきてしまっている。
「どうするの…?」
「分からないわ…幸いなことにW号機の損傷は軽微だけど…パイロットが」
ミヨコが落胆しながらつぶやいた。
レンはレイの容態を見に行っているので今ここ、指令執行所にはいない。
『使徒なおも進行中!国連軍、元の49%の戦力を削られました!』
「そ、そんなにか…!?約半分ではないか!」
総督と呼ばれた中年の男が身を乗り出してモニターを食い入るように見る。
そこには勝ち誇ったかのように両手のようなものを上げ触手で国連軍の戦闘機を破壊していた。
それは楽しんでいるかのようにも見える。
「くそっ…使徒め!!……予備パイロットが昨日すでに到着していると聞いたが!?」
「は、はい…ち、ちょっと待ってください!ノリコちゃん!『彼』はどこにいるの!」
「待ってください……確認しました!シェルターA−13番区に『彼』を確認しました!」
「急いで、つれて来い!………できればW号機に乗ってもらいたいものだが……」
「はい……ですが、乗ってくれるでしょうか?」
「今は願うしかないさ」
総督はそうつぶやきその硬い椅子に腰を下ろした。
ガタンをいうむなしい音がする。
『彼』とは誰なのだろうか。



シェルター
「ゆ、揺れますね…?」
俺が振動の不協和音にうんざりしながら、多少うとうとしてきたときに隣に座っているエリちゃんが話しかけてきた。
確かに、不協和音は相変わらずだがそのボリュームが大きくなっている気がしないでもない。
「うん、確かに、揺れがひどくなっている気がする……何が起こってるんだろう…」
エリちゃんは周りを気にするしぐさをすると俺にそっと耳打ちした。
かかる息が軽くむずがゆかったがそれどころの話ではなかった。
「それが……"使徒"が襲来したそうです……」
俺はその声を聞いて我が耳を疑った。
使徒だって!?
あの、悪魔達が帰ってきたのか…?
い、いや、映画の続編のキャッチコピーではないけどさ…。
それが本当だとしたらこの揺れはその使徒との戦いの揺れであるはずだ。
でも、なんでこんな機密的なことをエリちゃんは知ってるんだ?
「なんで、君はこんなことを知ってるんだい?」
「私の姉が国連軍の使徒対策委員会『エンジェルバスター』ってところに所属してて……それで姉が言っていたんです」
どうやら、国連も寝ぼけては居ないらしかった。
二度にもわたって人類を脅威に知らしめた使徒襲来。
使徒戦役と呼ばれているがそれの対策組織を作っているとはな……。
でも、ネルフはその残党狩りは一般ニュースで放送しているほど問題になっている。
大丈夫なのだろうか…。
「その辺は完全に国連と一体化していて問題はないと言ってました、姉が」
「その…・・・君の姉は色々機密を話しすぎでは?」
「お酒が入ってしまうと舌が饒舌になるみたいで…」
エヘヘ、と笑っていたが残念ながら笑いどころではなかった。
使徒は迫ってきていて、今自分たちの頭の上で戦いが繰り広げられていると思うと怖くなった。
ぐしゃぐしゃに頭をかきたくなったし、頭を抱えてうずくまりたかった。
『死ぬかもしれない』という恐怖概念が一層強くなっていく。
しかし、実際そんなことはできるはずもなく、隣に自分より年下の女の子がいるためかっこもつかん!
そのとき、一度大きくシェルターが揺れた。
本当に大丈夫なのだろうな?
だが、そのときだった。
頭の中にあるビジョンが見えてきた。
こ、これが走馬灯!?
いや、いや、走馬灯は普通自分が経験したことや見たことがあるものしか出てこないはずだ。
じゃあ、一体……。
灰色の大きな人間のようなものがなんか宇宙人のようなでかくて気持ち悪い生物と戦っていた。
結構負けていた。そこは市街地だった。
それが、本当のことなのか、それとも俺の単なる妄想及び、考えすぎた結果が生み出した幻想なのかはわからない。
「水島さん……どうしたんですか?」
エリちゃんが俺の肩を揺さぶった。
変な表情をしていたのだろう。おかげで現実に引き戻された。
でも、今のは、一体なんなのだろうか……。
「い、いや、ただ、考え事をしてただけだから」
「そ、そうですか…」
気のせいだったのだろう。
俺の視界は元のコンクリート丸出しな、シェルター内を映していた。
だが、そのとき外へと繋がるはずのシェルターの扉が開き、二人の黒い男が入ってきた。
おいおい、シェルターをジャックしても意味ないぜ。
「この中に水島ユウキ君はいるかね!?」
黒い服の一人が叫んだ。
みずしまゆうきねぇ……。
ミズシマユウキか……。
…………。
俺か!?
いや、俺の同姓同名か!?
そうだよ!みずしまゆうきなんて居そうな名前だろ!?
なあ、そうだろう!?
「あ、あのう……水島さんじゃないんですか?」
隣のエリちゃんがそう一言、言ってしまった。
そして、それは運悪く、黒服の男の片方に聞こえてしまったらしく――出易いようにドアの近くにいたのが間違いだった――近寄ってくる。
なんか、後ろは壁で逃げようにも逃げられん。
「君が、水島ユウキ君かね?」
「は、はい…そうですが…」
「一緒に来てもらえるかね?」
「そ、それは任意同行ですか?」
精一杯の俺の反論はそれだけだった。
黒服の男達が黙っている。
それは否定の意。つまり、強制であり、早くしろということなのだろう。
勝手だとは思ったがここで喚いた所でこの先の運命はあまり変わらない。
自分で歩いて連れて行かれるか、強制的な手段で連れて行かれるかしかない。
「分かりました、行きますよ」
「水島さん?」
「ごめん、また、縁があったらということで」
エリちゃんはコクリと頷く。
黒服の男に促されて俺は、前と後ろに挟まれる形でシェルターを出た。




「総督自らですか!?」
「ああ、ここはリーダーが出た方が相手も理解してくれるだろう」
総督と呼ばれた、『高羽(たかば)カズヒロ』は今まで居た発令所を出て、格納庫へと向かった。
一方、ミヨコは総督自らがまだ、乗らないとも分からない少年のところに行くのは立場上威厳がないと注意を促していた。
だが、カズヒロはこう言った。
「危険を冒してまでアレに乗るとは私は思えんのだ。だから、私が行く」
ミヨコは理由になってないと叫ぼうとしたがやめた。
確かに、現在エンジェルバスターは窮地に立たされている。
権限を使えば民間人を強制的にエヴァに乗せることも容易い権限を持っているが、たんとか本人の納得する形で乗ってもらいたい。
だから、こうして組織のトップが行くのだろう。
そう、言い聞かせた。
そして、格納庫の一室にたどり着いた。
横はガラス張りになっており、下が見えるようだ。
そこには、すでに連れてこられていた水島ユウキがいた。




いきなり、機械的な部屋に連れてこられている、俺。
少々待っていろと言われて待っている。
後ろには黒服二人が立っている。
逃げないようにってことなのか。
しばらく、待っていると少し、髭を蓄えた40代ぐらいの男と20代ぐらいの若い女性が、俺が入ってきたところとは逆のドアから入ってきた。
喧嘩でもしたのか女性の方は多少表情が優れていない。
その男は、いきなり、手を差し出してきた。
「私はここ、Apostle Busterの委員長を務めている高羽カズヒロだ、よろしく」
いきなり、丁寧な自己紹介と握手もされてしまったため俺は咄嗟に握り返し、名前を名乗った。
「は、はい…水島ユウキです」
「さっそくだが、下を見てくれないかね?」
俺はガラスに近づき下を見下ろした。
そこには………灰色の物体が見え…た。
頭がズキンと痛む。
そのときだった。
俺の視界に、また見たこともないビジョンが映る。

それは、少年がどこかに座っており、周りでは叫び声がこだましている。
その瞬間黒い何かに飲み込まれた。

「大丈夫か?ユウキ君!?」
気がつくとさきほどの高羽と名乗った男の人が俺を支えてくれていた。
まだ、ちょっと頭がクラクラするがとりあえず立てるので『大丈夫です』と言って立ち上がった。
なんだ、今のは…。
「驚いたかね……我がApostle Busterが国連指導の下、建造した対使徒戦用決戦兵器『エヴァンゲリオン』だ」
「エヴァンゲリオン……これが」



To be continued


次回予告
エヴァに搭乗を頼まれるユウキ。
恐怖と義務感が心を揺らがせる。
迫り来る使徒。
今、闘いの刻。


後書き
『こいつの小説読みにくいな〜』と思った方。
その通りであります。
一人称かと思いきや一転、三人称に変わる。
読みにくいことこの上ないですよね?
この場を借りて謝ります。申し訳ありません。
でも、この手法を変える気はありませんので。
感想とか批判とか待ってます。