・・・・西暦2000年に南極に大質量の隕石落下により起きたセカンドインパクト。   



水位上昇、天変地異、経済の崩壊、民族紛争、内戦・・・それらにより世界人口は半分に激減。



それより15年世界はようやく復興の兆しを見せた頃、世界に新たな危機が襲う。



「使徒」と呼ばれる謎の巨大兵器の襲来である。



この予測されていた「使徒」による襲来に対抗すべく人類は汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」



を開発し2015年には三機を実用化に成功、そしてそのパイロットとして三人の少年少女を選び出す・・・・。



その中に・・・彼がいた・・・かつて人を恐れ、人を憎み、人を信じることを忘れかけた少年。



しかし誰よりも愛を欲しがった少年。



「碇 シンジ」がいた・・・。








・・・・西暦2015年、第二新東京市のとある孤児院。

「「「「え〜んえ〜ん。」」」」

「ほら・・・みんな、泣かないで?もう会えない訳じゃないんだから。」

「ぐすっ・・・シンジ兄ちゃん行かないで!」

「俺もみんなと一緒に居たいよ・・・家族だもんな・・・。」

「ミクちゃんダメよ、シンジ君も悲しいんだから。」

「でも・・・え〜ん。」

「ミクちゃん、みんな・・・・俺は絶対に帰ってくるから・・・泣かないで。
みんなに泣かれたら・・・俺も・・・泣いちゃいそうだから・・・。」

「ひっく・・・約束・・・だよ?シンジお兄ちゃん・・・。」

「・・・っ・・・ああ!約束だ!」

「・・・寂しくなるな・・・ホントに。」

「シンジ君・・・苦しくなったらいつでも戻って来ていいのよ?
ここは・・・シンジ君の家なんですからね?」

「・・・はいっ!ヒデキさん、トワコさん・・・っ・・・。
いえ父さん、母さん・・・今まで本当にありがとうございました。
それじゃあ行って来ます・・・。必ず・・・また顔出しますから。」



「「「「「シンジお兄ちゃん!またね!」」」」」



「みんな!行って来ます!!!」




「「「「「「「行ってらっしゃい!シンジ君(お兄ちゃん)!!」」」」」」」







新世紀エヴァンゲリオン
〜何が為に僕は戦う〜
第一話     使徒襲来








===NERV本部・発令所===

「正体不明の物体、海面に姿を現しました!!」

「物体を映像で確認、メインモニターに回します。」


「・・・15年ぶりか・・・。」

「ああ・・・間違いない、使徒だ!!」

「来るべき時が来た・・・人類が避けることの出来ない試練の時が・・・。」







===第三新東京市・某所===


ウ〜ウ〜ウ〜

サイレンと共に放送が掛かる。

『緊急警報、緊急警報をお知らせします。只今第三新東京市全域に特別非常事態宣言が出されました。
住民の皆さんは速やかに指定のシェルターに非難してください。』

『緊急警報、緊急警報・・・



「おいおい・・・勘弁しろよ。」

そう言うと少年は公衆電話の受話器を下ろす。

「電話も駄目か、電車も止まってるし・・・。」

「ま、いいか。歩くのは面倒だし、ここらで待とっと。多分来てくれる・・・かな?」

適当なことを言って少年はベンチに腰掛ける。
・・・この少年は碇シンジ、中性的な顔立ちに黒い髪黒い瞳。
体型はやや細く見えるが筋肉が良く絞り込まれている手足。
かなりの美少年だ。

「・・・・それにしてもあのクソ親父・・・今更何の用なんだ?まぁ、来た俺も俺か・・・。」

手に持った封筒から写真を取り出す。
そこに写っていたのは美人な年上の女性。
写真には書き込みがされてある・・・。




(シンジ君へ
私が行くから待っててね。
胸の谷間に注目(ハート♪))




「・・・注目してます。」

そう言ってマジマジと胸の谷間を観察。

「なんて馬鹿なマネをしてる暇じゃないな。
かと言ってジタバタしてもしょうがないし・・・寝よう。」

もうどうでもいいやって感じでベンチに寝転び寝ようとする少年。
そして数秒。

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・!!!

「う〜ん・・・。」

ゴオオオオォォォ・・・・・。

「うっせぇな!!!だまれぇぇぇえ!???」

シュパアアアア!!!!

「どわっ!?ミ・・・ミサイル!!??」

ドオオオン・・・

ミサイルを目で追っていたシンジ、ミサイルが何かに着弾した。
そしてその何かは山の間から姿を現す、それは何とも形容しがたい生物のような巨大な化け物。

「・・・何だ、あれ・・・?」

変な化け物と戦闘機が戦っている。シンジは何事かとその光景を見ている。
化け物の腕に光が集まる。

ビシュウゥゥゥゥゥゥ!!!

ズボォォン!!

「あっ、一機やられた・・・・・・ってこっちに落ちて・・・きたぁぁぁぁ!!!!!」

ゴワシャーン!!!

逃げたシンジの真後ろに戦闘機が落ちて爆発した。

ボォン!!

「ぐっ!!」

きたる衝撃波に身を固めるが何も来ない。
シンジが目を開くと目の前に青いスポーツカーが。

「お待たせシンジ君!!早く乗って!!」

「はい!!!」

「しっかり掴まってんのよ!」

キュキュキュ!!!

ブオオオオオオン!!!

エンジン音を轟かせて車が走り出した。
化け物から離れたのを確認してシンジは溜息をつきながらシートに沈む。

「ごめんねぇ遅れちゃって。」

「いえ、助かりましたよ。ありがとうございます、葛城さん。」

「ミサトでいいわよ?シンジ君。」

「はぁ、ならミサトさん。あの何とも言えないセンスをしたデカブツは一体?
何処の国の秘密兵器ですか?」

「この状況でよくそんな冗談が言えるわねぇ。」

「それが俺のセールスポイントですから。」

「??・・・ま・・・まぁいいわ。あれはねシンジ君、「使徒」よ。」

「使徒・・・・?」

「今は詳しく説明している場合じゃないわ。急がないと。」

ボオオオオオン・・・・・

エンジン音を轟かし、車が加速して行く。
シンジが使徒を見る・・・すると紫の巨人が使徒と戦っていた。

「!?」

ドカッ!!

ズズゥン・・・

「ミサトさん!デカイのがもう一体・・・!!」

「シンジ君、アレは味方よ。」

「味方・・・。」

ガッ!!

バキィン!!

「一方的にやられてる・・・!」

「くっ・・・・・・。」

(わかってたことだわ・・・今のレイには荷が重過ぎる・・・!)

ミサトが唇を噛む。

戦っていた巨人が居なくなり、戦闘機が使徒から離れてゆく。

「・・・?ミサトさん、みんな逃げてってますよ。」

「シンジ君、顔引っ込めてショックに備えて!!!」

「へっ!?」

次の瞬間使徒の足元が光った。

ズドゴオオオオオオオオォォォォ・・・・・!!!!

「どわあああっ!!??」

ゴオオオオオ・・・・・・・。

衝撃波が去り、道路のど真ん中でひっくり返っているミサトの車。

「いって・・・大丈夫ですか?ミサトさん。」

「・・・ううう・・・。」

「ど・・・どこか痛いんですか!?」

「ううう・・・まだ33回もローン残ってたのにぃ・・・ 。」

「・・・そっちの心配かよオイ。」






===NERV本部・発令所===

「わははははは!!」

NERV発令所、軍人と見える制服を着た男がなにやら騒いでいる。

「見たかね!!これが我々のNN地雷の威力だよ、
これで君の新兵器の出番は二度とないというわけだ!!」

「電波障害のため目標確認まで今しばらくお待ちください!」

男性オペレーターが声を上げる。

「あの爆発だ、ケリはついてる!」

「・・・・。」

ピピ・・・ビュウン!!

「!!爆心地にエネルギー反応!!」

「なんだとぉ!!??」

「映像回復しました!」



「「「おおっ!!」」」

正面の巨大スクリーンに映像が入る、巨大なクレーターの中で・・・歩く使徒の姿。
少し体が焼けただれているが何事も無かったかのように移動。
紅い光球の上にある顔のようなものが二つに増えていた。

「我々の切り札が・・・!!」

「町を一つ犠牲にしたんだぞ!?」

「何てヤツだ!!・・・化け物め!!!」




「・・・・―はっ、わかっております。はいっ―わかっております。」

ピッ・・・



「・・・碇君、本部から通達だよ。」

軍人の一人がサングラスの男に話しかける。
サングラスの男は席を立ち、軍人達のほうを向いた。

「今から作戦の指揮権は君に移った、お手並みを拝見させてもらおう。」

「我々国連軍の所有兵器が目標に対し無効であったことは素直に認めよう・・・
だが碇君、君なら勝てるのかね?」

サングラスの男は自信気にサングラスを上げ言う。

「ご心配なく、その為のネルフです。」







「ふぁ〜あ・・・あのーミサトさん。」

「なーに?」

「ここ、さっき通ったような気が・・・。」

「あれぇ?そうかしら。」

「・・・・まさか、迷ってないですよね。」

「(ぎくっ)あ・・・あはははははぁ・・・。」

「・・・・・迷ったのか。」

二人の後ろのエレベータのドアが開く、そしてそれに乗っていた金髪の女性から声が掛けられた。

「どこへ行くの、二人とも?」

「へっ?」

「あっ・・・リツコ・・・。」

「あんまり遅かったから迎えに来たわ。
人手も時間もないんだからグズグズしている暇無いのよ。」

「ごめ〜ん、迷っちゃったのョ、まだ不慣れでさ〜。」

「・・・・その子ね、例のサードチルドレンって。」

「碇シンジって言います、はじめまして。」

「・・・はじめましてシンジ君、私は技術一課E計画担当博士、赤木リツコよ。よろしく。」

「こちらこそ。」

「一緒に来てくれるかしら、あなたに見せたいものがあるの。」

「はあ・・・あの〜俺、親父に会いに来たんですけど。」

「来てくれたら会えるわ。」

「そうですか・・・。」





===初号機ケイジ===



「暗いから気をつけて。」

「暗いなぁ。」

バチン!!

「っ・・・・!?」

真っ暗のケイジに明かりがともる。シンジが見たのは・・・角の生えた紫の巨人の顔。
その凶悪そうな顔はテレビに出てくるような巨大ロボとは何か違う雰囲気がある。

「なっ・・・顔!?・・・ロボット?」

「厳密に言うとロボットじゃないわ、人の造り出した究極の汎用決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオンよ。
我々人類の最後の切り札・・・これはその初号機よ。」

「エヴァンゲリオン・・・か・・・か・・・か。」

「シンジ君?どったの??」

「かっ・・・カッコいい・・・。」

「「えっ??」」

「・・・これもあの親父の仕事か・・・。」

「そうだ。」

「!!」

ケイジ内に男の声が響いた。シンジはその声の主を見上げる。
声の主の男はエヴァの頭の後ろのガラスの向こうにいた。
その男はシンジの良く知る人物・・・自分の苦しみの原因。



「・・・親父・・・。」



「・・・ふっ、出撃。」

「はぁ?」

「指令!零号機は・・・まさか初号機を!?でもレイは・・・!」

「問題無い、予備は届いてある。」

「なっ・・・まさか!!」

「指令!!レイでさえエヴァとシンクロするのに七ヶ月かかったんですよ!?
今日来たばかりのこの子にはとても無理です!!」

「座っていればいい、それ以外は望まん。」

「ですが・・・!」

「葛城一尉!今は使徒撃退が最優先事項よ!
そのためには誰であれエヴァと僅かでもシンクロ可能な人間を乗せるしか方法は無いのよ!
それとも・・・なにか他に何かいい方法があるの?」

「・・・・俺は道具・・・か。」

「・・・シンジ、エヴァに乗れ。説明を受けろ。」

「見たことも訓練もしたこと無いのにかよ?イカレたか?
それに・・・何か他に言うことあるだろうが・・・。」

「シンジ、下らん話をしている暇など無い。乗れ、さもなくば帰れ。必要ない。」

ドガアン!!

シンジが床を踏みつけた音がケイジ内に響いた。
シンジは怒気のこもった目を真っ直ぐゲンドウに向ける。

「・・・・母さんを死なせて、俺を捨てて・・・久し振りに会ったと思ったら人のこと物扱いか!!
しかも見たことも無いロボットに乗って戦え!?見下してんじゃねぇぞ何様だ!!
俺はお前みたいな奴に命令されたかねぇ!!!」

「シンジ君止めなさい!」

「人に物頼む態度ってやつも忘れたのか!!!!
降りて来い、テメエだけは許せねぇんだよ!!!!」

「・・・・・・・。」

「何とか言え!!俺は・・・俺は、少しなら・・・今なら許せると思ってたのに!!!」

「・・・シンジ、時間が無い説明を受けろ。お前が乗らなければ世界が滅びる。」

「・・・・変わらないんだな・・・・お前は・・・。」

「シンジ、乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」

「てめぇ・・・降りて来い・・・降りて来いっっっ!!!!」

シンジの怒声が飛ぶ、その目は真っ直ぐゲンドウを見据える。
そのシンジの雰囲気のせいか誰もシンジに言葉を掛けれない。
ゲンドウはシンジから目を離し少し下がる。

「待ちやがれ!!」

ブォン・・・

「冬月、レイを起こせ!」

『使えるのかね?』

「死んでいるわけでは無い。こっちへよこせ。」

「降りて来いって言って・・・・。」

シンジが叫ぼうとしたとき自動ドアから怪我人が乗ったベッドが運ばれてくる。
ベッドがシンジの上に乗っている少女を見て・・・驚愕した。
右手にはギブスがされてある、腕と右目に包帯、所々から血が滲んでいている。
かなり苦しそうな表情・・・こんな怪我で戦うなどまず無理だ。

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ。」

「なっ・・・何言ってんだ!!」

「はい・・・うっ!」

レイと呼ばれた少女は激痛に耐えながら立ち上がろうとする。
シンジはレイに駆け寄りレイをベッドに寝かせる。

「駄目だ!!起きるな!!」

「・・・うっ・・・はぁはぁ・・・!」

レイをベッドに寝かせる。シンジはまたゲンドウを睨みつけて口を開く。

「・・・こんな子を・・・よく平気で乗せようだなんて思えるな・・・!
人類の為ならこの子を犠牲にしても良いのかよ!!!?」

「・・・使徒を倒さなければ我々に未来はない。」

「最悪だよ・・・お前は。」


シンジはレイの手を握り・・・優しくつぶやく。

「・・・・・・ごめん、俺のせいで・・・。」

そうつぶやくとシンジはゲンドウを見て声は小さいがはっきりと言う。



「・・・・・俺が乗る・・・俺が乗るから・・・この子を寝かせてあげてくれよ。」



「シンジ君・・・ごめんなさい・・ありがとう・・・。」

「・・・あの子をお願いします。」

「・・・シンジ君よく言ってくれたわ。さっこっちへ来て、簡単に操縦システムを説明するわ。」

「待ってください、条件があります。」

「何かしら。」

シンジは振り向き、ゲンドウを見る。

「・・・オッサン、後で・・・ここに来い、話がある。」

「・・・いいだろう。」

「よし。リツコさん、説明・・・願いします。」








ゴォォォ・・・・・

ケイジ内のエヴァを浸していたLCLが抜かれてゆく、
オペレーターの声が響く。

『冷却終了!!ケイジ内、全てドッキング位置。
パイロット・・・エントリープラグ内コックピット位置に着きました!』

『了解!エントリープラグ挿入!!』

バシュッ!!

シンジの入ったエントリープラグがエヴァの首の後ろに挿入される。

『プラグ固定終了!第一次接続開始!!』

『エントリープラグ注水!』


===エントリープラグ内===

「えっ・・・何だ!?水責め!?」

『心配しないで、肺がLCLで満たされれば直接酸素を取り込んでくれます。』

「臭っ!!この水臭っ!!」

『我慢しなさい!男の子でしょう!』

「・・まぁそりゃ女の子じゃないのは確かぶぶ・・・ぶはぁ・・・!」

『主電源接続、全回路動力伝達・・・起動スタート!』

『A10神経接続異常なし、初期コンタクト全て異常なし、双方向回線開きます!!』

「・・・シンクロ率40%、いけるわ。」

「エヴァンゲリオン初号機!発信準備!!」



『第一ロックボルト解除!』

『解除確認!アンビリカルブリッジ移動!!』

『第一第二拘束具除去!』

『一番から十五番までの安全装置解除』

『内部電源充電完了、外部電源充電完了、外部電源コンセント異常なし!!』

「エヴァ初号機、射出口へ!」

「・・・・・ふう。」

『5番ゲートスタンバイ!』

『進路クリア!オールグリーン!』

『発信準備完了!!』

「了解!!・・・碇指令、構いませんね?」

「勿論だ、使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い。」





「・・・発進!!!」

バシュッ!!!

「うっ!!」

ゴオオオオオオオッ・・・!!

初号機が高速で打ち出される、シンジにかなりのGがかかった。
シンジはそれに耐える。

そして地上、道路が開き・・・初号機が出てきた。

ガアァン!!

「うっ・・・と・・・よう、待っててくれたのか?」

距離は離れているが正面に第三使徒「サキエル」の姿。

『いいわね、シンジ君!』

「すぅ〜はぁ〜・・っ・・・はい!!」

「最終安全装置解除!!」

「エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!」

ガゴン・・・

「がんばるのよ・・・シンジ君・・・。」


初号機が放たれる・・・シンジは真っ直ぐとサキエルを見据えた。


「・・・絶対・・・死んでたまるか・・・!」



NEXT・・・・・・