新世紀エヴァンゲリオン
皆が居る未来のために


第二十四話 心の力


渚カヲルがネルフに来てから一週間は経った。

いまだ使徒として覚醒はしていない。

「ねえ、シンジ、何でこんな時期に予備のチルドレンが送られてくるの?」

「・・・・・・・・確かに、疑問だな・・・・・それに父さんを経由して送られてくるのならまず俺に聞くはずだ・・・・予備パイロットは二人もいるんだからな」

「じゃあ、司令が許可出したってこと?」

「もしくはゼーレが直接送ってきたか・・・」

シンジが小さく言った。

「えっ?」

「い、いや、なんでもない」

アスカには聞こえなかったようだ。

(あいつが使徒だってことは分かりきっている・・・なら、こっちから攻めるか・・・)

シンジは用があると言いアスカには先に帰ってもらった。

ネルフ・カヲルの部屋

「カヲル、居るか?」

シンジは軽くドアをノックする。

だが、返事はない。

カヲルは自分のカードキーを入れるとドアのロックがはずれる。

「カヲル、居るんだろう」

シンジはくまなく部屋の中を探索した。

が、カヲルはいなかった。

「あれ、いない?」

シンジは自分の予想が外れたのでガックリして近くにあったイスに腰掛けた。

ネルフ・某所

レイは一人歩いていた。

一刻も早くあの少年のことを言わなければ。

レイには分かっていた、あの少年がシンジの隠していた最後の使徒だということを。

初めてあったときシンジの前の世界の記憶を教えてもらったレイだったがカヲルのことだけは一切語らなかった。

レイが司令室に向かう直前にその少年はいた。

「やあ、君がファースト・チルドレンだね。綾波レイ・・・・」

その少年は柔和な顔をして親しみのこもった瞳で言った、レイと同じ赤い瞳で・・・。

「そ、そうよ」

レイは相手の少年が次に何を言うか分かっていた。

「君は・・・僕と同じだね・・・・」

レイは泣きそうになった。

前の自分なら無表情で「そうね」といっていたのだろうと思う。

だけど今は違う。

シンジやアスカ・・・皆が居てくれたから今の自分がいる。

だからレイはこう答えた。

「昔は同じだったかもしれないけど・・・今は違うわ」

カヲルは意外そうな顔をして

「そうだね・・・・・・・・・・今となっては」

二人は少しの間黙っていた。

だが、カヲルがすぐに口を開いた。

「少しお茶でもしないか?」

「えっ・・・・・・うん・・・」

レイはカヲルの顔と瞳を見てしぶしぶ承諾した。

第三新東京市・喫茶店

レイとカヲルは近くの喫茶店に来ていた。

特に食べるものはないのでコーヒーを頼んでそれから二人とも黙ってしまった。

だが、何分かしたあとカヲルから切り出した。

「君はいいのかい?」

「なんのこと?」

カヲルは人差し指でレイの顔を指差した。

「その瞳・・・・そしてその肌。紛れもなく君は使徒なのだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

カヲルの言葉は続く。

「そして使徒である君はシンジ君や惣流さんのような人間とは生きてはいけないよ。必ず誰かに拒絶される」

これだけを聞いてレイは目じりに涙を溜めていた。

だが、カヲルは一つだけ間違えていた。

シンジは人間ではなく使徒と同じ力を持ち非なるものであるからだ。

「で、でも拒絶されるのを恐れて人間との付き合いなんてできないわ!これは私たち使徒も人間も同じことだと思うわ!」

レイの言葉を聞いてカヲルは少し唖然とした。

だが、しばらくして

「じゃあ、僕はこれで・・・・・・・運命は変えられないのさ・・・・分かっているんだろう?」

カヲルは自分のコーヒー代を払うと喫茶店から出て行った。

レイはさらに赤くなった瞳でその色とはまったく逆の色の空を見つめていた。



ネルフ・カヲルの部屋

カヲルは帰ってきた。

時間が遅いからだ。もっともそれ以外に理由はないのだが・・・。

だが、そこには先客がいた。

「待ってたよ、カヲル・・・」

「シンジ君・・・何故ここに?」

「君と話をするためだけど・・・」

「そうか・・・僕に何の話をしたいんだい?」

「お前のその容姿からして・・・・・・・使徒だろう?」

「・・・・・・・だったら、どうだっていうんだい?」

「いずれ使徒として活動をするんだろ?」

「運命は変えられない」

カヲルはそのとき目をそらした。

だが、シンジはそのそらした瞳に問いかけるように

「運命は変えられないんじゃない・・・・・自ら変えるんじゃないのか?」

カヲルは俯き

「今は・・・・分からない・・・・・」

「そうか・・・」

シンジは残念そうにそう言うとカヲルの部屋を出て行った。

その夜シンジは家に帰らなかった。



ネルフ・ケイジ内

カヲルが一人サザビーを見ながら立っている。

「さあ、行くよ・・・・おいでアダムの分身・・・・そしてリリンのしもべ」

カヲルは前を向くとケイジ内に“浮く”

その瞬間サザビーのモノアイがともる。

そのときネルフ内にアラートがなる。

第二発令所

「ケイジ内にA.Tフィールドを発生を確認!」

「まさか使徒!?」

「待ってください・・・・これは・・・・サザビーです!」

発令所にいた全員が驚く。

その驚きがさらに増すのが次に情報である。

「誰が乗ってるの!?」

「・・・・無人です!サザビーのコクピットに生命反応はありません!」

「何ですって!?」

「スクリーンに映像出します!」

アラートばかりの文字だったスクリーンが変わる。

サザビーの前にポケットに手を突っ込んだ赤い瞳の少年が姿を現す。

発令所にいるすべての人間が唖然とする。

それはセブンスチルドレンの渚カヲルだったのだから。

『セイント・ラディアンス行きます!』

「!シンジ君!?」

『はい、準備オッケです』

「分かったわ、シンジ君は彼を追って!アスカたちを後続に出すから!」

『お願いします!』

セイントラディアンスはセントラルドグマを降りていった。

『カヲル・・・・何故、こんなことを!!』

「待っていたよ、シンジ君」

ついにセイントラディアンスがサザビーに追いつく。

そして手を組み合わせる。

その真ん中にカヲルがいる。

『カヲル、運命は変えられるって何故信じないんだよ!』

「運命は変えられないもの。だから、セカンドインパクトは起こり使徒は攻めてきたんだ」

『ああ、確かにそれは変えられなかった運命だ!だけどこれからはどうだ!?サードインパクトは防ごうとしているんじゃないか!』

「それはただの無駄な抵抗というものだよ。起こってしまうものは起こってしまうんだ」

そのときサザビーはシールドからビームトマホークを出した。

シンジも片方の翼から対艦刀を出して応戦する。

二つの武器が火花を散らす。

『未来は誰にも分からないんだよ!そんな初めから諦めていたら世界はどうなる!?』

『みんな死んじゃうんだよ!!使徒に抵抗もしないで『未来が滅ぶから先に死んだほうがいい』っていう考えを持って!!』

「・・・・・っ!」

カヲルは顔を背ける。

そのときだった。

(シンジ!!)

シンジの脳裏にアスカの声が響いた。

『アスカ!?』

シンジが上を見るとアスカのセイバーが近寄ってきていた。

それをカヲルも見てカヲルはヘブンズドアの方向に向かった。

『待て!カヲル!・・・うわっ!』

見てみると行こうとしているセイントラディアンスの肩をサザビーが掴んでいる。

『このー!!』

その瞬間赤い機体が落ちてきてサザビーの左腕を持っていった。

『アスカ!?』

『ここはわたしに任せて!シンジはあいつを止めて!』

『分かった、すまない!』

セイントラディアンスはセイバーにサザビーを任せるとヘブンズドアの方向にバーニアを拭かせた。

ヘブンズドアにはロックがかかっている。

カヲルは目線をドアのロックに向けるとトックがはずれる。

ついにヘブンズドアが開かれた。

そこには磔にされた白い巨人があった。

「アダム人間にとって忌むべき存在・・・それをも利用して運命を変えようとするリリン・・・僕には分からないよ・・・」

だが、カヲルははっとして

「いや、違う!!これは・・・・リリス!!・・・・・そうか、そういうことか、リリン」

そのときカヲルはセイントラディアンスの腕につかまれた。

『・・・・・・・・・・・』

「シンジ君・・・・」

『カヲル君は今、何をされたら幸せかな?』

そのときのシンジの瞳は柔らかかった。

「?」

『僕は君が幸せになるんだったらなんだってするよ』

「じゃあ、僕を殺してくれ」

『やっぱり・・・・以前もそうだったから・・・』

「以前!?」

『僕は時を遡ってきた。信じてもらえないだろうけど・・・』

「ば、バカなっ!?」

『以前僕はこの手で君を殺した・・・』

「・・・・・・」

『でも、今は殺せない・・・・君は死ねないんだ・・・・』

『僕は皆が笑っていられるような世界を作るためにエヴァンゲリオンに再び乗ったのだから』

「シンジ君・・・・・」

『それに君の生を望んでいる者がここに一人いるから』

するとヘブンズドアの向こうからWゼロが入ってきた。レイである。

『カヲル!!』

「レイ・・・・」

『私もあなたも使徒!それはまぎれもない事実!でも、それが何!?使徒でも私たちは同時に人間なのよ!』

『だから・・・・だから・・・私と生きて!!生きる目的がないのなら私のために生きて!!』

「・・・・・・・・分かった・・・・レイ、僕も君とともに生きよう!僕も一緒に戦うよ!!!」

こうして最後の使徒、渚カヲルは去った。

っていうか改心したって言うんじゃない!?「byアスカ」





次回予告

ついに戦自が攻めてきた。

シンジはみんなとともに最後の決戦に出る。

だが、数的にフリだった・・・。

そのとき現れた者達とは!?

次回、最終話 君の笑顔とともに!

皆が居る未来を掴み取れ、ネルフ!