lightning


PHASE−09 苦悩


ラーはインビシブルの廊下を歩いていた。
一人で歩く。
すれ違う人間は誰もいない。
「父さんは俺に何を伝えたかったんだ?」
ラーは父であるドゥメイン・ハルバートンが何を言ったのか思い出していた。
『お前が一人戦争に加わったって戦争は終わらないさ。戦争を終わらせるには全滅させるか停戦するしかない…』
『お前はそれができるか?』
ドゥメイン・ハルバートンの言っていることは正しかった。
討っては討たれ、討たれては討つ。
この繰り返しで戦争はいっこうに終局を迎えない。
「やはり戦うっていうのは間違っている…でも戦わないと死ぬ」
今の時代人間は生きるために戦っているというのが常識になっているのだろうか?
戦う理由に殺したいからというバカはいないだろう。物好きで二、三人はいるかもしれないが。
ラーはそんなことを考えながらMSデッキに向かった。


−MSデッキ−
MSデッキには当然のごとくライトニングとシャイニング・バード、リザイア・ウィングがあった。
そして数人の整備士が整備を行っている。
生き残るためだ。
しかし、ラーには進んで戦いたくはなかった。
生き残るためにしょうがなく戦う。
だけど戦い続けると戦争は終わらない。
「じゃあ、どうすれば戦争が終わるんだよ……」
「それはね……」
ラーは考えていたものが口から出ているなど気づかなかったようで何故分かった?という顔になっている。
ラーの横にいたのは副長のネーマルだった。
「それはって戦争はどうしたら終わるってことですか?」
「そうよ…あなたが言ったんじゃない……?」
「口に出てました?」
ネーマルはラーの通りコクリと頷く。
「このままじゃ確実に戦争は終わらないと思うわ…そしてたぶん皆それを心のどこかで分かっている…」
「じゃあ、なんで戦争をやめないんですか!?」
ラーが大声を出した。
それがMSデッキに響いた。
だが、整備士たちはまったくそれに気づかず作業を続けている。
「それは……私にも分からないわ。軍の上層部は本当にコーディネイターを滅ぼしたいって考えている人もいるのよ…」
「…………」
それっきりラーは黙った。
何かを考え込んだようだ。
それを悟ったネーマルはブリッジに戻った。
だが、ラーの思考を邪魔するものがあった。
『総員第一戦闘配備!各人所定の位置へ!パイロットは搭乗機へ!!』
「こんなことをしても戦争は終わらないのに……」
ブリッジにいる艦長…マイに聞こえないと分かっていても言わずにはいられなかった。
ラーはすぐにパイロットスーツに着替えてライトニングへと搭乗した。
そのとき無線からルゥの声が聞こえてきた。
『今回は私が出撃するからよろしく!』
「よろしくって……危険だ!やめろ!」
『今度は聞かないよ。私だってラーを死なせたくないもん』
無線が切れた。
「おいルゥ!……ったくそれはこっちだっておなじだっつうの」
ライトニングがカタパルトに接続される。
赤いランプが青へと変わる。
「ラー・ハルバートン…ライトニング行きます!!」
ライトニングが身を少しかがめてバーニアを吹かし闇の宇宙へと発進した。
そして次に同時にリザイア・ウィングとシャイニング・バードが発進する。
「エラルド・コウ…リザイア・ウィング出るぞ!」
「ルゥ・ハイウィンド…シャイニング・バード出ます!」
二機の戦闘機も発進し交差してライトニングの後ろにつく。
『ルゥ、戦闘が始まったら僕も助けることができないよ』
『分かってるわ…少しは訓練したんだから』
『俺も支援はできるが助けるってことは無理だ…落ちるなよ!』
ライトニングは青いジンとシグーへ向かって突進した。
「ウルフ、操縦は任せるわ!ネーマル三機の支援をお願い!』
「了解!バリアント撃て!!」
インビシブルから放たれたバリアントがシグーと青いジンを放す。
『隊長!!』
『私はあの艦をやる!お前はあのMSを叩け!』
『了解!』
レクの乗る青いジンはライトニングに銃を向け攻撃する。
マシンガンなのでフェイズシフトで防御できるがラーはあえて回避する。
『また、お前か!?……しつこいんだよ!』
ライトニングがビームライフルを放つがジンは難なく避ける。
『そんなひょろ玉当たるか!……ウゥ!!』
後ろからリザイア・ウィングがビームカノンを撃つ。
それに続いてシャイニング・バードもビームカノンを放つ。
ジンはそれを避けるのに精一杯でライトニングに目がいかない。
『よし!いまだ!!』
ライトニングが左腕に装備されているビームサーベルを抜き放ちジンに切りかかる。
だが、ジンはそれも反転して避けるとライトニングを蹴り飛ばした。
『うわっ!!』
『もらった!!!』
続けざまにジンがサーベルで切りかかるがシャイニング・バードがフライングアーマーで防御した。
『今よ!ラー!』
『サンキュ、ルゥ!!』
ライトニングが足でジンをけり飛ばしビームライフルを連射する。
『ちくしょう!!!!このままじゃ落とされる!!』
『レク撤退しろ!ここは私一人に任せろ!』
『ちっ!……了解…』
青いジンはコークス隊の母艦フレアリットに帰還した。
『シグーはどこだ!?』
「ラーさん、インビシブルが攻撃を受けてるの!急いで戻って!」
『了解!』
『エラルドさん、換装をお願いします!!』
『分かった!』
リザイア・ウィングのコアファイター部分が切り離されライトニングのバックパックにドッキングした。
そしてライトニングがビームライフルのエネルギーパックをはずし新しいのを取り付けインビシブルへと向かった。


「ゴットフリート照準…撃て!!!」
大型のビーム砲がシグーに放たれるがシグーは簡単に避けるとバルカン砲でインビシブルを攻撃した。
ラミネート装甲があるがそう何発ももたない。
だが、ライトニングがバックパックに装備されたリザイア・ウィングのスナイパービームライフルを構えシグーに照準を合わせる。
そのときシグーが丁度良く攻撃するために動きをとめた。
『いまだ!!』
スナイパービームライフルから強力なビームが放たれる。
『な、何っ!?』
シグーは避けたつもりだったがバックパックのバーニアが爆発した。
『くそっ!ここは撤退するしかないか……』
そうサファイアは呟くと破損したシグーは母艦に戻っていった。
『ふう、終わった……』
三機はインビシブルへと戻った。


−インビシブル−
一時的に戦闘が終わりインビシブル内はもとの静けさをとり戻していた。
ラーは食堂にルゥと二人で食事をとっていた。
食器を下げにラーが行くと一つの食器が残っていた。
もちろん食べものがのっている。
「これ誰のなんですか?」
「ああ、それ捕虜の飯だよ。作り終わったらもって行くんだけど今日は手間取ったからまだ持っていけないんだよ」
「じゃあ、僕が持って行きますよ」
「そうか?……そりゃあ助かる」
ラーは食器を持ち先に部屋に行っていてくれと言うと捕虜がいる独房へと向かった。


独房にはコロニー『アルジローレ』で撃破したジンのパイロットがいた。
つまり捕虜である。
「食事だぞ」
ラーはおぼんが一個入るぐらいのスペースに食器をいれ捕虜に渡した。
「今日は遅かったのね」
「仕方ないだろう。僕たちだって人間だからおなかもすくし…」
「そうね」
捕虜は食べ始める。
「名前……そういえば聞いてなかったから」
「私はクリス・マリアル…」
「他に家族は?」
「両親が二人だけよ……それよりもう行ったら?」
「あ?……ああ」
ラーは独房を出て行こうとした。
だが、クリスの「待って」という声があった。
「何?」
「あんたの名前は?」
「僕は…ラー・ハルバートン」
「そう、分かったわ、ラー」
ラーは意味不明といった顔をして独房を出た。



予告
ラーはその後何度か捕虜であるクリスに食事を運びに行った。
そのときラーは聞いてしまったクリスの悲しい過去。
そしてそのころドゥメイン・ハルバートンはアークエンジェルの降下によって命を落としていた。
それを聞いたラーは・・・。
次回 PHASE−10 命令違反と開放