darkness


PHASE−07 忘れ去られたコロニー


戦闘が終わりMSデッキは活気にあふれていた。

しかし、そんな活気があふれる空間に大きな音が響いた。

「うわっ!!・・・」

リィナがクラトスを思いっきりひっぱたいたのだ。

クラトスは涙目になり頬を少し赤くして

「な、なにするんだよ!」

「あんたまた私の邪魔したわね!」

「またってなんだよ!?」

「アカデミーのときもあんなと組むと必ず失敗していたわ。あんたの所為よ」

「そ、そんな!!」

そのときリョウが割って入った。

「二人とも、もうよせ!」

そういってリィナの手を抑える。

「副隊長、放してください!!もう一発!!」

「お、おい!!」

そのときシャドウから降りたミラードがリョウと同じく止めに入る。

「二人とも、やめるんだ。もう終わったことだろ、言い合ったって意味がない・・・」

「隊長も!!私一人で倒せたのに!!それを邪魔されたのよ!?」

「邪魔だと!?・・・お、お前!!」

リョウがリィナのことを一発殴ろうとしたが

その瞬間。

さっきよりも大きな乾いた音がMSデッキに響いた。

しかし叩いたのはリョウではなかった。

周囲の皆が唖然としている。

さっきまで動いていた整備士たちも固まっている。

殴ろうとしていたリョウや殴られたリィナ、頬を押さえているクラトスも当然のことながら口をポカンとあけている。

殴った本人はミラードであった。

「思い上がるのもいい加減にしろ・・・クラトスはお前を助けようとした。クラトスがいなかったらお前はこの場にいなかったんだ」

「っつ!!」

「ミラード・・・お前・・・」

「隊長・・・」

ミラードはしばらくの間目を閉じる。

殴られたというより叩かれたリィナはしばらくの間放心状態だった。

目はどんよりしている。

ただ涙だけ流れていた。

ミラードは振り返ると

「リョウ、クラトスとリィナを頼む。俺はさきにブリッジにあがる」

「あ・・・ああ、分かった」

リョウも呆然としながらミラードの言葉に答えるとリィナをもとに駆け寄る。

ミラードはそれを見て少し笑みを浮かべて通路えと続く道に消えた。

音がなかったMS格納庫だったがしだいにまたうるさいような声と機械音が場を占めた。

「おい、行くぞ、リィナ・・・お前も頬を冷やさなくちゃいけないだろ?」

リィナは無言で立ち上がった。

だが、その顔はまだ俯いていた。





ミラードは白い上着を着ながらブリッジに入った。

そこにはさきほどの戦闘した三機が遠方に捕らえられていた。

「どうだ?」

「はい、敵はあのコロニーに向かっているようです」

画面にコロニーの名前が出てくる。

『グレイプヤード』という名前だ。

「グレイプヤード?」

「ああ、おそらくな。あのコロニーはすでに廃棄されたものだがウン・ノウという老人が住んでいるらしい。俺もよく知らないけど・・・」

「ウン・ノウ?・・・それなら聞いたことがあります。確か剣豪とかって・・・」

「ああ、俺もそれは聞いたことがあるんだけど・・・何しろ廃棄コロニーのことだからな・・・」

そう話しているとその三機はコロニーの中に入った。

「敵はコロニー内か・・・」

「どうします?潜入しますか?」

「よし・・・俺がシャドウで潜入してみる・・・後は頼む」

「はい!」

ミラードはパイロットスーツに着替えてMS格納庫へと向かった。





その頃リョウとクラトスとリィナは医務室にて叩かれた頬を冷やしていた。

リィナはさっきよりかはましな表情になったがまだ暗い影が射していた。

クラトスは頬が少し赤くなってはいるが大丈夫なようだった。

「副隊長・・・」

「ん?」

リィナが突然声を出したのでリョウは少し驚いた。

「隊長って・・・いつもあんな感じなんでしょうか?」

「あんな感じって?」

「その・・・怒りっぽいっていうか・・・」

「いや、いつもあんな感じだったら俺は副隊長やってないだろうし艦長のミーナだって隊長と認めなかったと思うけどな・・・」

リョウは苦笑する。

対照的にリィナは「?」という顔をする。

「じゃあ、何故・・・今日は?」

「・・・お前に非はあるから・・・・・・じゃないのか?・・・・俺は先にブリッジに上がる・・・二人ともちゃんと機体を整備しとけよ」

「「は、はい」」

リョウが出て行った。

と同時に沈黙が走る。

だが、すぐにクラトスは立ち上がった。

「僕・・・MS・デッキに行くよ?整備しなきゃいけないし・・・」

クラトスはそう一言つぶやくと出て行こうとした。

「待って!」

そんなクラトスをリィナはとめた。

「なに?」

「その・・・・・・・・ご、ごめん・・・」

クラトスはそれを聞くと微笑してMS・デッキへと向かった。

リィナもしばらくするとMS・デッキへと向かった。





「シャドウの準備をラミエラーフォルムで頼む!」

「了解!!」

ミラードはMS・デッキに来るとそう整備員に告げる。

そしてコクピットに飛び乗った。

OSを立ち上げると「GUNDAM」の文字が出てくる。

「隊長!!」

そのときリィナがコクピットに近づいた。

「どうした?」

「いえ・・・その・・・さっきは!!」

続きを言おうとしたが

「分かったならいいんだ・・・叩いたりして悪かった・・・機体を整備しといてくれ・・・おそらく後で出撃することになると思う」

「わ、分かりました」

ミラードは頷きハッチを閉じる。

そして発進した。





シャドウは単身グレイプヤードに向かった。

港に入ると機体をそこに残しコクピットから出て内部に向かう。

「残骸だらけじゃないか・・・・・・ん?」

残骸の中には家のようなものが見えた。

見るに難しいが・・・。

「まさかウン・ノウが!?」

ミラードはそこに向かった。

「誰かいるのか!?」

ミラードはその建物に向かって叫んだ。

だが、そのときだった。

「うらぁ!!」

いきなりとび蹴りをしてきた人間がいた。

ミラードは難なく前転して避ける。

「そこだぁ!!」

だが、後ろからなぐりかかってくる人間もいた。

「ちっ!!」

ミラードはひじをあてて隙を作り横に飛びのいて避ける。

「もらったぁ!!」

だが、さらにもう一人そこを狙う人間がいた。

鈍器のようなものでなぐりかかろうとしている。

しかし、ミラードは近くにあった残骸でそれを流すとその手を持ち反対側に投げた。

「わぁ!!」

「なっ!?」

最初にとび蹴りをしようとした人間と投げられた人間は衝突する。

そして第二波の攻撃をしようとしていた二番目になぐろうとした人間は至近距離からミラードをなぐろうとするがミラードはその人間の顔を蹴り上げて未然に防いだ。

見ると二人の男子と一人の女子がのびている。

ミラードは手をはらった。

「この程度か・・・」

「ふっ・・・私の三人の弟子の攻撃を避けるとはな・・・」

「あなたが・・・ウン・ノウ・・・」

「いかにも・・・」

ミラードは一礼した。

「師匠コイツを家にいれるの!?」

「ああ、客人だ」

「・・・ふん!!」

三人は気が乗らないようだった。

「あ、ここへ僕の艦を呼びたいのですが」

「ああ、構わん・・・三人は私から言っておく」

「ありがとうございます」

ミラードは無線でセラフィートに連絡した。



予告

グレイプヤードへと入港したセラフィート。

そこでミラードからある人物の話を聞く。

そしてリョウはある頼みをウン・ノウにするのだった。

次回 PHASE−08 同志の存在と新兵器